会津若松市上下水道部 水道建設課

INTERVIEW
− 安心を守る人たち−

福島県会津若松市
上下水道部

上水道施設課

遠藤利哉 副主幹
二瓶信宏 主任技査
横山和郎 主任技師

今回は、福島県会津若松市上下水道部 上水道施設課の遠藤利哉副主幹、二瓶信宏主任技査、横山和郎主任技師に登場いただきました。

会津若松市はフラクタのAIを活用した劣化度診断のみならず、施工管理面でもデジタル技術を積極的に取り入れ、ネットワーク通信・センシング技術の活用による管路管理のさらなるレベルアップも模索している。

お三方に象徴される〝チーム会津若松水道〟が未来につなぐ水道人スピリットは。

水道工事を極めた先に共通化が

遠藤さんが大学で専攻していたのは道路や土質などの土木分野。「勉強していないし、わからない」と思っていた水道が面白いと感じたのは、昔は水道工事における断水工事だという。「使用者の水を止めることになるから、怒られるし工事は緊張しますが、無事終わると感謝され、水道の大切さを知っていただける」「バルブ操作を自ら行うなど断水工事を積み重ねることで、災害時の対応力が付く」と、一つの仕事でさまざまなことが学べる奥深い水道の楽しさにはまってしまった。

そこから水道工事を極めようと、入庁から23年の間に経験を一定程度積む中で取り組んだのが、監督業務基準や出来形基準、工事の完了調書といった施工管理基準などの共通化・標準化、さらに土木工事では当たり前に共通化されていた県共通の積算システムについて水道工事バージョンの構築にも関わってきた。「共通化、標準化することで、次世代に水道という財産を引き継ぐことができるし、一定の品質も確保できる」。その上、公民が同じ視点に立って連携していくことも重要であるとし、現在進めているデジタル技術の活用や、今後構築予定のプラットフォームもその延長線上にある。

この共通化・標準化の取組みは、会津若松市にとどまらない。現在、近隣事業体と、水道の技術連携という視点で水道工事監督業務の仕様書などの共通化について研究している。「水道の技術職員の不足は、現在あるいは将来において各事業体が共通する悩み。共通ルールがあれば、例えば工事監督業務などで事業体の枠を超え、お互いに助け合うことができる」。全国的な課題に対して、会津若松市の水道として何ができるのかと真正面からぶつかる。国の新水道ビジョンも掲げる〝挑戦〟を体現する熱い語り口だ。


思いは一つ、形にする仲間と共に

その挑戦を現場で形にしていく頼れる仲間の一人が、遠藤さんと同期の二瓶さん。公園や下水道の他部局を経験し、東日本大震災の発災前に水道に戻り、災害支援ではいわき市に遠藤さんと共に向かった。

矢継ぎ早のヒント・アイデアにぼやくことはないのですか?と水を向けると、苦笑いしながら「安全・安心な水を送る。水道を持続させることへの思いは一つ」と、同じく管路設計や工事監督など長いキャリアで得た経験を元にデジタル技術の活用にも取り組んできた。

今年度は夜間工事を担当、「夜中にバルブ操作や断水工事を行い、明け方近くに工事完了をメールで報告したり」と、現場の緊張、達成感、その苦労を肌身で知るからこそ、水道工事のリアルな課題解決に欠かせない役割を担われているのだろう。


将来見据えた積極的な広報も

この同期二人の背中を見ながら、入庁7年目の横山さんは水道の将来を見据えている。

そもそも水道が役所の仕事とは知らずに配属された思い出があることから、なおさら「街の人は水道の仕事が市役所の仕事とは知らないだろう」と思い、考えたのが新たなPRの取組みだ。

昨年、高校生向けの水道工事出前講座に取り組み、市の職員採用説明会にも手を挙げ、参加者へのプレゼンに立った。出前講座を開催した工事箇所は横山さんの担当だったこともあり、学校側への事前折衝を主導し、講座参加者ではないが同じ高校から市職員の採用者が得られた。

「当たり前に水が出るから、赤水や断水が起きない限り、水道に意識が向かない。少しでも広報を工夫しないと。(フラクタのAI技術を活用した)管路の健全度マップも水道の実情を知ることができる見える化として使える」「今後は高校生に限らず、違う視点で水道の職場紹介ができれば」と語る。

技術者の確保・育成は市に限らず、管路更新を担う地元施工会社も同様の悩みを抱えるだろう。市の率先するさまざまな広報展開、水道工事の魅力PRにも期待がかかる。


横のつながりから広がる挑戦の輪

会津若松市の水道は、昔から横のつながりが強いという。

「何事も相談しやすい良い環境だと思う。
困った時には、部署を越えて皆で対応する」(遠藤さん)、また勉強熱心なのも昔からで、現在は「Suidou-aizUP作戦⁺(読み仮名:すいどうあいづあっぷさくせんぷらす)」と銘打ち、課内職員が一丸となって職場内研修に取り組む。主に職員が講師となる場合が多いため研修に備え、事前に準備や勉強をしなければならない。講師となる職員も力が付くし、何より技術継承につながる。

新たなことに挑戦する気風は、その水道人文化に育まれ、水道を担う次世代に受け継がれていく。