老朽水道管をつかむ
道路の下に埋まっている水道管は、一体どうなっているのだろう? 見えるようになったら面白い――。Fractaのソフトウェア開発のきっかけはこれだ。今、水道管がどのくらい劣化しているか、それが5年以内に破損する確率はどれくらいかを予測する。最初の実証を行ったサンフランシスコでは、実際の現場を見学した。住宅街の交差点のど真ん中にある工事エリア。地下のぬかるみに入り、地中に埋められたパイプの中に手を突っ込んで感触を確かめた。
水道をはじめ、ガス、電力、交通、通信など、インフラは常にあって当たり前だと思っていないだろうか。インフラは、年月を経てじわじわと劣化し老朽化。世界各地で社会問題を引き起こしている。水道管の場合なら、突然破裂して道路に水が溢れ出し、通行が遮断される。日本を含む先進国では、水道インフラの老朽化対策が喫緊の課題だ。米国では、報告されている漏水は年間で実に約24万件。計算すると1日あたり650件以上の漏水事故が発生している。
水道管の実寿命は?
この大きな課題に立ち向かう。まず、そもそも水道管は、なぜ劣化し破損するのか。
水道管の表面は、道路の下の土の中に埋め込まれた時から、まわりの土壌との化学反応によって腐食していく。そして、何らかの衝撃が加わると腐食したところに穴があいて破損し漏水する。これが外面腐食。設置した場所の土壌や周辺の環境に大きく影響を受けるので、すべての水道管が同じ速度で起こるわけではない。
米国水道協会(American Water Works Association)によると、かつて水道管として多く採用されていたねずみ鋳鉄管の寿命は120年と言われているが、実際には60年で破損するものもあれば180年保つものもあるという。これは裏を返せば、平均値ではなく実寿命、つまりそれぞれの実際の腐食の速度をより正確に予測できれば、水道管の更新の最適化をはかる余地がある。
予測は最適化をもたらす
だが、米国では水道管の老朽化が進んでいるにも関わらず、効率的で十分な配管更新がなされてこなかった。水道事業者は、一般的に配管の敷設年数の古いものから順に更新するというアプローチを採用してきた。敷設年数は、確かに重要な要素だが、劣化・腐食を促進する因子は年数だけではない。
実際に、水道事業の運営者の話によれば、敷設年数が古い配管を掘り返しても配管表面の劣化・腐食が見受けられず、本来は更新せずに済んだ配管を更新してしまったというケースが多々あるという。これは、配管の劣化・腐食が敷設年数だけではなく、配管を取り巻く数多くの環境要因によっても引き起こされている証しだ。
さまざまな環境要因も含めて解析し、劣化・破損などを予測すれば、水道管のメンテナンスは最適化することができる──これこそがFractaのソリューションだ。