日本の社会でまだまだ
できることがある
──持続可能なインフラ事業の
運営を支援するために

米国で認められた技術を日本へ

Fractaのソフトウェアサービスは、上水道に関して、既に全米27州において60社以上の水道事業体に採用され高い評価を得ている。この米国で確かな有効性が認められたサービスの、次なる展開を目指した時に浮上したのは、やはり米国と同じく配管の老朽化の課題を抱えている日本とイギリスだった。

Fractaは、日本の水道事業・インフラ事業のお客様に向けて、水道管路向けのソフトウェアサービスや各種インフラ劣化予測ソリューションを提供していくため2018年、日本での事業活動に着手。同年5月には、水処理の世界大手企業である栗田工業(東京証券取引所一部上場)との約40億円規模の資本業務提携をスタートし、事業展開を加速している。

 

 

破損件数の少ない日本は安心なのか

日本と米国では、水道管の劣化状況は大きく異なる。米国では年間約24万件もの水道管の破損が発生しているのに対し、日本では年間数千件に過ぎない。高度経済成長期に敷設した古い水道配管をきちんと問題として捉え、地震などの自然災害にも対応できるよう、積極的に更新投資を行ってきたことの成果だ。

しかし、長く続いた経済の停滞の影響を受け、更新投資は年々減少の一途を辿っている。さらに、人口減少と高齢化、節水型の洗濯機やトイレの普及とともに、水道料金収入も減少。特に地方では、人口の減少幅が都心部と比べて大きく、水道事業体は施設の更新や投資に使用できる予算が非常に少ない。これほど真摯に水道事業に取り組んできた日本でも、問題は山積みだ。

 

 

日本では得られないデータを活かす

Fractaの技術は、水道管の劣化が進む米国だったからこそ開発できたものだ。豊富な機械学習データは、水道管の破損が頻発する米国でしか得られない。この米国で約10万kmにも及ぶ水道管を対象とした機械学習データから開発した独自のアルゴリズムを、日本の水道インフラに、適用することで、さまざまなサービスを日本国内で提供することが可能だ。

各水道管の破損確率を高精度に解析し、客観的な数値を用いて管路全体の健全性の評価と可視化を行うことで、公平・公正な管理を実践することができる。予測に基づき破損確率の高い水道管から更新を行うことで、整備のためのメンテナンスコストや投資計画の最適化を実現できるだけでなく、配管の破損・漏水事故を最小限に抑えられる。さらに、減少していく水道料金や技術者不足など、多くの課題に対するソリューションとして、持続可能な水道事業の運営を支援することができる。

 

 

あらゆるインフラへ

2019年には、Fractaの技術の日本における有効性を、6つの水道事業体*で検証。そのうち3つの事業体(川崎市、神戸市、越谷・松伏水道企業団)では検証を完了し、米国で実用化しているサービスと同等の有効性が確認された。その結果を受け、2020年春からサービスの本格提供を開始。

今後、神奈川県など、残る水道事業体における検証が完了次第、検証によって得られた水道管の劣化パターンをAI/機械学習によって学習させることで、予測精度のさらなる向上を図っていく。Fractaは、独自のオンライン管路診断ツールを2022年までに100超の水道事業体へ提供することを目指す。

Fractaの事業は、水道だけではない。ガス、鉄道、プラントなどの劣化・破損などの予測に対しても、独自の機械学習アルゴリズムを適用。2019年からは、ガス配管の劣化を予測する実証実験を東邦ガスと着手し、世界初の試みとして注目を集めている。鉄道では、東京急行電鉄と、電気設備の劣化予測に関わる実証実験に取り組んでいる。そのほかにも、環境関連、通信、電力、プラントなどの各種インフラアセットで、機械学習によるメンテナンスの効率化・高度化に向けた協議や取り組みを進めている。

米国で認められることができたFractaは、再び愛する日本へ。日本の社会や経済の中で、できることがきっとまだまだある——その深い想いとともに、私たちはイノベーションの歩みを止めない。

*6つの水道事業体とは、神奈川県企業庁、川崎市上下水道局、神戸市水道局、大阪市水道局、越谷・松伏水道企業団(埼玉県越谷市及び北葛飾郡松伏町)、未公表の1事業体のこと。